建物明渡請求事件の裁判を行い、判決を取得した場合または裁判上で和解したが被告が和解条項に従わない場合、明渡の強制執行を行う必要があります。
強制執行とは、債務名義(判決や和解調書)に記載された内容が債務者(義務を負う側のことです。)によって自発的に行われない場合に、債権者(権利を得ている側のことです。)が裁判所に申し立てることによって、裁判所が強制的に実現させる手続きです。
建物明渡請求事件の場合は、建物から債務者(入居者)を退去させ、荷物等も排除してしまうことが強制執行に当たります。
具体的には、判決や和解調書を出した裁判所に執行文という強制執行が可能であることを示す文書を付与してもらう等の手続きを行ったうえで、裁判所の強制執行を扱う部署にそれらの文書を添付して強制執行の申立てを行い、所定の予納金を納付します。
書類上の問題がなければ、執行官が物件に出向き「○月○日に明け渡しの強制執行を行う」という内容の文書を物件内に掲示する、催告という手続きを行います。この時には、債権者の立ち合いが必要ですし、執行官が物件内に入りますので、合鍵か鍵を開けられる開錠技術者を準備する必要があります。
また、通常は強制執行時に荷物の運び出し等を執行業者に依頼しますので、その担当者も立ち会って見積をしてくれることが多いです。
その次に、実際に入居者を立ち退かせる、断行という手続きがあります。この時も執行官が物件内に立ち入り、入居者が残っていれば退去するように告げ、荷物等が残っていれば執行官の監督のもと、債権者が依頼した執行業者が搬出と保管を行います。
最後に搬出した物品の保管期限と保管者の連絡先を記載した文書を物件の外側に掲示して強制執行は完了です。
実際には、そのあとに間を置かず鍵の付け替えも行います。入居者が戻ってきてしまうと、また一から手続きを行わないといけないからです。